アシュレイというバーの中に入ると、カウンターのところで、私は見たことのある人を見つけた。

「お兄ちゃん」

 私の声にマスターが先に気づいて、つづいて兄が振り返る。なんか「マズイ」とでも言いたげな気まずいような顔をしていたので何だろうと背伸びをすると、隣に見たことのない女の人がいた。

 なるほど、デート中だったのだろう。からかってやろうと思ったら、逆に兄から追及されてしまった。

「円香、なんでおまえ沢木と一緒にいるんだよ」
 あ、隣に沢木さんがいるのだった。

「今日は同期の子たちとの飲み会で……」

「そこになんで沢木がいるんだ」

 兄は自分のこと棚にあげてすっかり疑っている。

「やっぱり、妹だったんだな、おまえの」

 ……やっぱり、って。思わず沢木さんを見上げると、にこりと目元を緩ませた。

「沢木さん、気づいていらっしゃったんですか」

「うん。可愛い妹に溺愛してるって……その割に、やることはやっている、と」

「バカ、余計なこと言うなよ。つーか、妹に手出したりするなよ。おまえだけはダメだ」

 沢木さんの挑発に乗せられた兄が、ますます眉に皺を刻んで怒っている。元々目つきの鋭い兄がこうなると、結構な迫力……だけど、単純すぎて呆れてしまう。

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