愛は満ちる月のように
発育が早く、小学生のころからブラジャーが必要な体型をしていた。初潮を迎えたのは小学四年のとき。当時から彼女は知能指数が高く、学年で誰よりも優秀だった。

しかし、バストのサイズやテストの点数と心の成長は比例しない。

美月は、身体の成長に心が追いつく前に、性的な嫌がらせを随分受けてしまう。

加えて、桐生の遺産を相続してからの騒動……。

わずか二十三年、彼女の人生のどこに、異性に対する憧れや理想を持つときがあったというのだろう。


いや、あるとしたらほんの一時期――彼女を守ることだけを考えてくれた、悠の存在以外になかった。


(悠さんなら……なんて、甘かったわね、やっぱり)


美月は鏡に顔を映しながら、心の中で呟いた。

今回のことを決めたとき、悠ならまた美月に力を貸してくれるかもしれない、そう思った。

悠の女性観や結婚観が変わっていなければ、子供が産みたいなら自分の子供を産めばいい、そう言ってくれるのではないか、と。

婚姻中に産んだ子供は夫の実子と推定される。それならいっそ、本当に悠の子供であればいい。一緒に暮らして欲しいとか、父親としての役目を果たして欲しいとかは望まない。

ただ、子供に将来、父親の名前を教えてやれたら、と願った。


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