(……馬鹿げてる)


悠は心の中で何度も呟いた。

美月の肩を抱いたときに覚えた不思議な感情……それは悠にとってあり得ないことだ。


「絶対に違う……馬鹿げてる」


片側二車線の道路沿い、歩道を歩きながら悠は思わず言葉にしていた。

すれ違う小学生くらいの子供を連れた親子連れから、不審そうな顔で見られたことなど、今の彼に気づくはずもなく……。


美月がホテルの中に入るまでちゃんと見届けた。

あとになって、悠も泊まればよかったと思った。

自宅のマンションに来ることなど勧めず、美月に部屋を取ってやって、自分も隣に部屋を取れば安心できたはずだ。

それを『僕のマンションに』と口にしたから、変に警戒されたのだろう。


悠の自宅マンションは暁月城ホテルから直線で五百メートルの距離にあった。普段は会社まで車で通勤している。だが今日は、車を支社ビルの地下駐車場に停めたまま帰ってきてしまった。

明日の朝は秘書にタクシーを手配させよう。

悠はなるべく意識を美月から逸らすようにして、自分を落ちつかせた。


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