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「みあん家寄っていい?一緒に課題やろうぜ」

 ――笑顔で肯く私の、裏に隠された感情に、陣は気づいているかな。


 私の人生は、終わりのないロジックエラー。
 間違いが見つからないまま、また同じ間違いを繰り返す。
 私の元には、いつまでも天使が現れてくれない。


 私が誰かを好きになるとき、その誰かはいつも違う人を見ている。
 私が誰かに想いを寄せられても、やっぱり私はその誰かしか見れないの。


「はぁ~っ、落ち着く」

 ぼふっと、私のアパートのソファに着地する陣。その隣に腰を下ろす私。

「んふ、み~あ」
「うわっ」

 陣がぎゅっと私を抱きしめた。

「みあは猫みたいで、ほんとに可愛い」
「んむぅ……」

 私は真っ赤になって、どきどきする心臓をなんとか抑えこむ。
 陣は、いつもこうやって私とじゃれあう。
 私もこうやってじゃれあうのが好きだ。

 だけど……。

「みあ、好きだよ」

 ふと陣が真顔になって、そう耳元で、そっと呟くと、私は何も言えなくなる。
 私の心に、重たいものが堕ちてきて、心臓を握り締めたように思える。

「陣……駄目だよ」

 キスをしようとする陣を、私は止める。

「……ごめん」

 少し離れる陣に、私は首を横に振る。
 二人の間には、気まずい沈黙が訪れる。


 私は、陣が好きだ。

 友達という立場を利用して、いつも一緒にいるようにもした。
 少しでも、一緒にいたかったから。
 一緒に過ごすうち、陣の気持ちが私に動いていたのも気づいている。

 私はいつも、間違える。
 私はどうして、いつも好きになってはいけない人を、好きになってしまうんだろう。

 最初から、陣には彼女がいるってわかっていたのに。
 いけないとわかっていても、私は陣から離れられないんだ……。
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