カローレアの金
この女王…実は腹黒いんじゃないかという考えが、アンの中で自然と生まれる。

「ええと…それじゃよろしくお願いしますね、先生」

アレンが握手の手を差し出す。アンはその手を数瞬の間のあと、取り、

「…やめてください。王子の方が年上です、きっと。名前で呼んでください」

困り顔でそう告げた。

「僕は十六です」

「…私は十五です」

意外と近かった。

「あら、ロイは十五歳だったの。じゃあアレンと仲良くできるかしら」

「あのなあ…兵士と王子だぞ?一応身分はわきまえてる」

「常識あるのねー案外」

女王がさらりと失礼なことを言う。


「母上はこの方と仲が良いんですね」

「数少ない金髪仲間だからねー」

そんな嘘の理由を貫くのか、とアンは内心呆れた。


「そうだな…年が近いことだし、僕にも敬語は良いよ先生」

「だから先生と呼ばないで下さい。そして私は王子に敬語を使い続けます」

そうでないと、気が緩んで女だということがばれてしまうかもしれなかった。


「なぜ?」

「……金髪じゃないから、ですかね…」

「なるほど」

おいおい、そんな簡単に納得してしまうのか。

「じゃあ先生、敬語をやめてもらうのは諦めます。ただ、名前を教えてください」

「ロイです」

「違いますよね」

アレンのその言葉にアンの心臓が大きな音をたてる。


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