カローレアの金
レベペの中なら、こそこそ不満を言う…なんてことはなくて、思ったことをすぐ口に出し、剣を構えて戦うのに…ここは面倒だな、とアンはこっそりため息をついた。


「よーし、じゃあ実践練習といくか‼」

カインがアンから離れ、衛兵達に呼びかける。

「じゃあまずはロイと…そこの二人‼」

「は?二対一かよ」

「え?そうだけど」

カインはあっさりと言い放った。

しかも指名した二人は、こそこそと文句を言っていた二人だ。
急に指名されたことに驚きつつも、アンをこてんぱんにしてやろうとたくらんでいるのか、目には闘志が宿っている。


他の衛兵たちがアンと二人を人垣で取り囲み、カインが始まりの合図を出す。

アンは頭を掻いてため息をついた。

「おい、新人」

二人の内一人が構えながらアンを呼ぶ。

ちなみに、今回の実践では剣の使用は不可となっている。

「…なんでしょう」

「お前、色々待遇されてるからって良い気になってんじゃねぇぞ」

「そうそう、俺達がこてんぱんにしてやるよ…」

「……はあ」

アンのその態度が気に食わなかったのか、二人の中で何かが切れる音がした。


「先輩に対する態度から教えてやるよ‼」

一人が拳を振り上げ、アンに殴りかかる。

アンは何もせず、ただ立っていて、拳が目の前まで迫った時に最小限の動きで避けた。

男はよっぽど力んでいたのか、少しバランスを崩す。


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