触れないキス

空と月だけが知る真実

あっという間に暗くなりつつある校庭では、燃え上がる炎を囲んでダンスが始まっている。

そんな中、私は一人薄暗い校舎の中へと駆け込んだ。


当然ながら人は誰もいない。

あんなに賑やかだった校舎はすっかりガランとしていて、

虚無感や喪失感、達成感や充実感……そのどれもが入り混じったような、感慨深い空間となっていた。


そして、足を止めた美術室の前。

中は電気もついていないようで、やっぱりいないかな……と肩を落とした。

それでも一応扉を開けてみる。


「あ……!」


思わず小さな声を漏らしてしまった。

いつもの席に、いつものポスターボード。

そこには、恋い焦がれるそらの姿があったから──。


彼は何故か電気も付けずに席に座っている。

そんな暗いこの教室の中では、月の光だけが頼り。

その柔らかな明かりに照らされた、白く美しいそらの顔、きらりと輝く瞳が私に向けられる。


「……何しに来た?」


以前とまったく同じセリフを口にするそらに、自然と笑いがこぼれる。

彼の瞳は、私を睨むように鋭く光っているのに、声にも穏やかさは感じられないのに。

何故だか胸が熱くなって、涙が出そうになる。

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