その日の夜。

19:30。


「今日は早かったのね、灯里。もうすぐ御飯よ~」


ただいまーと玄関に入った灯里の前にエプロン姿の女性が姿を見せる。

まるっとしたその姿はここ5年ほど変わっていない。


吉倉智子。52歳。

灯里の母で、結婚以来ずっと専業主婦をしている。


灯里はバッグをリビングの棚に置いて二階へと上がった。

階段を上がってすぐ正面の部屋が灯里の部屋で、その隣が弟の柾貴の部屋だ。

灯里は部屋に入り、部屋着に着替えて後ろで結った髪をほどいた。

灯里の髪は肩の後ろぐらいの長さで、軽く天然パーマがかかっている。


灯里は手櫛で髪を整えながら窓の外へと目をやった。

窓の向うには隣家の敷地が広がり、庭の向うに戸建が見える。


――――10年前。

隣の家には灯里の幼馴染が住んでいた。

といっても7つ離れていたので歳の離れたお兄さんという感じだったが。

彼は一人っ子だったせいか灯里を幼い頃からとても可愛がり、いろいろと面倒を見てくれた。

優しく朗らかだった彼に灯里もなつき、灯里は彼が大好きだった。

しかし10年前に家の事情で彼は家族と共に引越し、それ以来会っていない。


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