シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・色彩

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居たたまれない。

本当に居たたまれない。



「うわあ、紫堂様素敵です。お似合いです!!!」



この店の全店員と全ての客が、皆玲くんに感嘆の溜息を送る。

拍手も黄色い声も聞こえ、硝子張りの店内に飛び込んできた通行人も多く…それはそれは酷い人だかり。


試着室から出てきた玲くんは…少しだけ満足そうにはにかんでいた。


ストールを大きく巻いたようなイメージのハードなドレープがとても綺麗な、シルバーと青が混ざったような・・・光沢ある絹のシャツに、細身の濃い青のパンツ。

フェミニンで少しセクシーなモード系。


それに、長身の玲くんの足首まである長い裾拡がりな深い…青みのあるトレンチコートを羽織れば…まさに優雅で気品ある夢の王子様。


元々の素材が凄くいいのに着飾れば…もう此の世の者ではない。


ああ此処は、セレブ御用達の銀座。


銀座に必要なのは、きっと玲くんみたいな王子様だ。


「知らなかった。此処のブランドって…"アレス=イオア"だったんですね」


全身青尽くめだというのに、珍しく気分はいいらしい。


それまでの疲れ切った顔が嘘のようで、高揚したような肌は仄かにピンク色。


あたしはブランドには疎いから何だか判らないけれど、蒼生ちゃんのプレゼントは玲くんが好きなブランドのものだったみたいだ。


幾らするんだろ。


少なくとも、タイムバーゲンセールで出されるものでもないだろうし、クリアランスセールで赤い割引なんてないだろうし、年末の福袋とかだって…仮にあったとしても10万、20万…以上の世界だろう。


玲くんは意外とお洒落さんだということが判明した。


いつもだってさり気なくお洒落さんだったけれど、高級ブランドのことも知っているなんて…さすが紫堂財閥の次期当主。



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