好きになっても、いいですか?

05



「ああ。ご足労掛けてしまい、申し訳ない」
「いえ……時期に、こうして会えなくなるなんて残念ですから。今の内に」
「ははは!もう老いぼれだからなぁ!」


車で到着した取引先で、かなり年配の男性と純一とが和やかに談笑していた。


「お……?彼女は?」
「ああ、彼女には私の第二秘書を務めてもらってます」
「――ほう……綺麗な女性だ。藤堂くんもスミに置けないなぁ!今まで頑なに秘書は早乙女君だけで、と聞いていたから。特別な事情が?」
「いえ。期待に添えるような答えはないですよ」


(――はぁ。まただ……)


麻子はこの手の会話に、この短期間で何度も遭遇してきた。

“女性を傍に置くのは珍しい”。

純一はそれほどまでに、女性と無縁だったということが本人に聞かなくともわかる。

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