取引先の会社に向かう車の運転席で、スーツ姿の塚島さんが、細い黒縁メガネをかけ、黒くてんてんとのびたあご髭を手で撫でながら言った。

「謝罪に行く時、いつもメガネにしてるんだ。真剣に謝ってる気持ちが伝わりやすいから…」

ハンドルを握り前を見据えながら、片手でダッシュボードを開け、シェーバーを取り出すとウィーンとあごを剃り始めた。

「コンタクトだったんですね…」

隣で座る私は、スカートスーツの下で、自分の胸のドキドキにとまどいながらも話をあわせた。
今まで、外回り営業の塚島さんと、社内で事務の仕事をする私は、電話で話を済ませることが多かった。
二人で、こんな間近で、
しかも、メガネにのびた髭の塚島さんと…出かけるなんて…。

鼓動の高鳴りがおさまる前に、車は駐車場で停車した。
お詫び用の菓子折りをもち、車のドアに手をかける。

「松田さん」

私は振り返った。

「!」

微かなムスク系の匂いが鼻から頭の中へ広がる…。
塚島さんの柔らかい唇が私の唇に重なっていた。

「気合をいれたから…」

そう言って、塚島さんは車を降りた。





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