まどろみの犬。。躾て愛して~色々な愛の形~
出会い
新宿の雑踏の中、汗まみれの間宮は、駆け足に近い急ぎ足で駅に向かっていた。
肩までの髪はお団子でまとめてあるものの、ほつれた髪が頬に張り付いて気持ちが悪い。
季節は本格的に冬を迎えようという10月。
体にぴったりとした黒の半袖Tシャツにピンクのパーカー、そしてズボンは黒のジャージという薄着にも関わらず、間宮は髪の生え際まで汗でびっしょりだ。
理由は週に2回のタップダンスのレッスンの帰りだからだ。
「くそっっ。。間に合わんか」心の中で毒づきながら、機械的に素早く足を交差させていく。
現在時刻は午前1時01分。。終電まであと2分。
明らかに間に合わない。
走れば間に合うだろうかと、何度目かの自問自答をするものの
夜のきらびやかな新宿をジャージ姿で走りぬける勇気が出ない事は
自分が一番よく知っている。
レッスンの後、着替えもせずにジャージ姿で出てきただけでも恥ずかしいのだ。
すれ違う人や後ろから歩いてくる人皆に変な目で見られている気がして
顔を上げられない。
舞台のオーディションが近い為、一人でギリギリまでレッスンしていたのだが
どうしてあと5分早く切り上げなかったのか、
15分前の自分に怒りが湧く。
ひっ詰めていた髪を片手でさっとほどき、手櫛で顔を隠すように下ろしながら
競歩ともいうべき早さで歩いたものの
時間はとうとう1時3分を過ぎてしまった。。

はた、と歩くのを止め小さく溜息を付く。
「うぅ、どうしよ。。」
息切れがひどかったため、人の少ない小道に入り、小汚いビルの壊れかけたブロックの上に腰を下ろす。
所持金はわずか400円。
確認などしなくても分かり切っている。
とりあえず落ち着こう。
家は世田谷、まぁどう考えても始発までは帰れない。。
400円じゃネカフェにすら入れないよね。。
寒空の下始発待つしかないかなぁこりゃ。
カクンと下を向いて、壊れかけたブロックの残骸をケンと蹴る。

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