最初で最後の恋文

Ⅴ、隠し撮り

あと三日で二月に入る。
二月に入ると、卒業式まで三年生は休みになる。
だから、あと一週間でアルバムを仕上げなければならない。

「あと一週間か…。」

隣で茜が呟いた。

さっきまで体育館で卒業式の予行演習をしていた。

遥斗は欠席していた。

「久々だよね。佐伯が欠席するなんて。」
 
茜の言葉に真琴は、うん。とだけ答えた。
 
最近の遥斗は欠席も遅刻もしていなかった。
前だったら、遥斗が欠席をしても遅刻をしても全然気にしなかったけど、最近はずっと一緒にいたので寂しい気持ちだった。
 
そんな真琴の顔を茜はチラッと見ると、

「変わったよね、佐伯。真琴と話すようになって、佐伯は変わった。
 
茜は遥斗が変わったことを強調するように二回言うと、真琴の目を見つめて続けてしゃべった。

「今まで無愛想だったのに、真琴と話すようになって佐伯笑うようになったと思う。…ねぇ、真琴。どう思っているの?佐伯のこと。」
 
茜は真っ直ぐに真琴を見つめていた。

「どうって…?」
 
真琴の言葉に茜はため息を吐くと、少し強めに言った。

「好きなの?」
 
真琴は茜の言葉に返事が出来ずに俯いてしまった。
そんな真琴に茜は優しく聞いた。
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