威鶴の瞳

空白の記憶



ふっ――気付けば外をさまよっていた。

……あれ、何をしてたんだっけ……?



見覚えは……一応ある道。

また本来の『依鶴』になっていたみたい。



……もう、怖いなんて思わないけれど。



BOMBに私たちの事がバレて、いつのまにか一ヶ月以上が経っていた。

まるで倍速で進む日常に、慣れてきてしまっていた。



覚悟なら、もうすでに決まっている。

どうしようも出来ないのだから。



特に『依鶴』は私の時に出現率が高いらしく、威鶴の依頼の時にはほとんど姿は現さない。

理由はよくわからないけれど、私が『依鶴』のニセモノだから、私が『依鶴』に一番近いからかもしれない。

なんて思っていたりする。



辺りを見回すと、トーマは居ない。

依頼中というわけではなかったらしい。



ならなぜこんなところに居るんだろう?

最後に覚えているのは……そう、就寝した時。



違和感のあるポケットに手を突っ込めば、やっぱりスマホが入っていた。

時間は夜の11時過ぎ……思っていたよりは早い時間帯だった。



ふぅ……とため息をつき、ふと日付が目に入ってきた。






思わず二度見をした。

私が最後に現れた日から、丸一日が経っていたことに、驚いた。



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