18インチ。

45.72センチメートル。


この長さが好き。

長くもなく、短くもない。


小さな丸い輪が繋がったシルバーチェーンの長さ。

それにシンプルなコインのチャームを下げる。





「これ、凄い気に入ったよ。ありがと」

鏡の前で、つけてとせがむ彼の後ろに立って、金具を留める。

思った通り、深めのVネックからみえる浮き出た鎖骨と長めの首によく映える。

嬉しそうにありがとうと繰り返す彼に、

「凄く似合うよ、よかった」

そう返した私がこれを選ぶ時、拘ったのはチェーンの長さ。




並んで歩いていても、横を向くと、丁度、目の高さにコインが揺れる。

昨夜の記憶が白昼夢のように鮮明に蘇る。




彼がくれた、痺れるほどの高揚感。

甘いキスといつまでも続けられる行為

声も枯れて、ぼやけた視線の先で。

ゆらゆらとゆっくりだったり。

激しく大きく揺れる、振り子のようだったり。

彼の顎と胸の間でずっと揺れてた。

気持ちよすぎて、耐え切れなくて、その腕に縋った時も、見えていたのはこのコインで。










名前を呼ばれて我に返る。


「聞いてた?」


「あ、ごめん、何だっけ?」


くすりと笑った彼は立ち上がる。


「いこっか」


「え?」


返事も待たずに彼は私の手を引いてレジへ向かう。





カフェを出ると手を握ったまま、彼は歩き出した。


「どこ行くの?」


「俺の部屋」


私の肩に手を回して、チェーンを指にかけた彼は、またくすりと笑う。


「ずっと見てるじゃん」


目の前にコインをちらつかせて、


「昨日の夜もさ」


今度は耳元で囁く。


「ずっと見てただろ?」


一気に身体が熱くなる。
喉が渇いて、膝から力が抜けそう。

そんな私を強引に歩かせながら、彼の声は嬉しそうで。


「ほんと、いいもんもらったよ」

「なんかほら、アレみたいだよね」


アレ、という単語に顔を上げると、


「催眠術に使う振り子みたい」


にっこり笑った彼に私は頷く。

確かにそうかも。





彼のアパートまで二駅。

電車の扉を背にしてる彼の前に立っていると、もろにコインが目の前で揺れて。
またトリップしそうになってた私を彼が咎める。


「こらこら」

「もうちょっと我慢しなよ」


私を抱きかかえるように密着して、嬉しそうに彼は言う。


「もうすぐたっぷり見れるじゃん」


こんなに大胆な彼は初めてだから、ちょっと戸惑うけど。

(ほんと、いい買い物したなぁ)

私も嬉しくなって、彼の胸に顔を埋める。

揺れるコインが頬に触れて、私達を祝福してくれてるような気がした。





おわり

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