時折、カラカラと妙な音を立てて首を縦に振りながら、年代物の扇風機が生ぬるい空気をかき回している。


 開け放たれた窓にかかるレースのカーテンは微動だにしない。
 風のない真夏の昼下がりは地獄のような暑さだった。


「……あっつぅ……」


 フローリングの床に敷いたお昼寝マットの上に、立川結衣(たちかわゆい)は細長い四肢を無造作に投げ出して変死体のごとく転がっていた。

 腰まで届く長い髪が汗で身体のいたるところに張り付いている。

 冷えすぎるのでエアコンは嫌いなのだが、さすがにこの暑さに耐えきれず、側に転がっていたリモコンを拾うとスイッチを入れた。


 窓を閉めるため窓辺に寄ってカーテンを開くと、雲ひとつない抜けるような青空の下、生い茂る街路樹の深い緑の中からセミの大合唱が暑さを倍増していた。
 結衣は大きなため息と共に窓を閉め、カーテンを引いた。

 こんな日に目的もなく外を出歩いても、日焼けして熱中症になるだけだ。


 結衣は地元中小企業に勤める入社三年目の一般職会社員、平たく言えば普通のOLである。

 今回、有給休暇の消化も兼ねて十日も夏期休暇を取ったものの、盆に三日間帰省する以外は特に予定もなく、初日から家でゴロゴロしていた。


 冷蔵庫の麦茶をコップ一杯分一気に飲み干して部屋に戻ると、狭い部屋は先ほどより明らかに涼しくなっていた。


 結衣は程よく冷えたお昼寝マットの上に再び横になると目を閉じた。

 どうせ何もする事はない。今日は思う存分寝てやろう。そう思った途端、うとうとと眠りに落ちていった。