ふと、人の気配を感じて結衣は目を覚ました。
 しかし、怖くて目を開けられずにいた。
 ボソボソと男の声がしたのだ。


 辺りはまだ明るい。
 昼間から泥棒? それとも痴漢?

 玄関の鍵が開いていたのだろうか?
 昼間にベランダや窓からは侵入しないだろう。

 相手の目的がよくわからないので、様子を探ろうと少し目を開けて驚いた。

 至近距離でメガネをかけた見知らぬ男が顔を覗き込んでいたのだ。

 慌てて目を閉じる。

 蜂蜜色の髪に濃い緑の瞳だった。
 なんか外国人っぽい。


「殿下ではないようだが……。それにしてもよく似ている。……って、おい! さっき目を開けただろう」
 そう言って男は結衣の額をペチッと叩いた。


「……いった……」


 額を押さえて横向きに転げた結衣は、横柄な不法侵入者に怒りがこみ上げてきて飛び起きざまに怒鳴りつけた。


「あなた誰?! ひとの部屋で何やってんのよ、変態!」


 男はひるむことなくメガネの奥から冷ややかな目で結衣を見つめると、もう一度額を叩いた。


「ねぼけるな。どこがおまえの部屋だって? よく見ろ」

 言われて結衣はまず自分の周りを見た。
 身体の下からお昼寝マットが消えている。
 床はフローリングからタイル張りに変わっている。

 ゆっくりと首を巡らせると、ドーム状の天井に覆われた巨大なガラスの筒の中にいた。
 しゃがんだ男の背後に筒の出口が穿たれ、その向こうにキーボードとディスプレイを備えたコンピュータのようなものが見えていた。


 結衣は辺りをキョロキョロと見回しながら男に問いかけた。


「ここ、どこ? どうして私、こんな所にいるの? それにやっぱり、あなた誰?」


 男は結衣をまっすぐ見つめて質問に答えた。


「オレはクランベール王国科学技術局局長、ロイド=ヒューパック。ここは王宮内にあるオレの研究所だ。おまえがここにいるのは一種の手違いだろう」
「手違いって何?」


 結衣が眉を寄せて訝しげに見つめると、ロイドは再び説明した。