王との謁見から戻ると、ロイドは結衣をラクロット氏に任せて研究室に戻っていった。
 その後結衣は、王子の部屋でラクロット氏にレクチャーを受けた。

 王子の性格や趣味嗜好、言葉遣いに普段の行動、テーブルマナーから果ては世継ぎとしての心得、いわゆる帝王学まで学ばされた。

 ラフィット殿下によれば、本人は疎かになっているらしい帝王学を、何故身代わりの自分が学ばなければならないのか疑問に思いつつも、ラクロット氏の講義は夕食を挟んで夜遅くまで行われた。

 人の良さそうな笑顔に騙された気がした。
 ラクロット氏はなかなか厳しい。
 解放された時にはぐったりと疲れ果てていた。

 王子が客間に寝泊まりするわけにはいかないので、結衣はそのまま王子の部屋に泊まる事となった。

 私物には触らないように言われたが、部屋中私物である。
 ようは、引き出しの中を探ったり、手帳を開いて覗いたりしなければいいのだろうと解釈した。

 部屋といっても実家の家より広い。
 浴室だけでも結衣の部屋全体の二倍はあった。

 結衣は結んだ髪をほどいてリビングに置かれたソファに背中を預け、深く腰掛けた。
 体中の力を抜いて目を閉じると長かった一日を思い返す。

 ただ昼寝をしていただけなのに、思いも寄らない事になった。
 ちゃんと日本に帰れるんだろうか。

 できれば盆までに帰りたい。
 何の連絡もせず実家に帰らなかったら捜索願が出かねない。

 実家に帰ればどこからともなく見合い話が来てたりするし、親戚がやってきて自分には記憶のない子供の頃の話を繰り返されてうっとうしい。

 だが、その間の食費、光熱費が浮くのは捨てがたい。
 夏場の電気代はバカにならない。
 ——と、考えて結衣はふと思い出し叫んだ。

「あ——っ! エアコンと扇風機つけっぱなし——っ!」

 扇風機は二時間したら切れるようにタイマー設定しておいたが、エアコンはタイマーを設定していない。

 結衣は思わずソファの上に横倒しになって突っ伏した。

「あぁ、せめてエアコンだけ切りに帰りたい……」