キウイの朝オレンジの夜


「うちの会社28日まででちょっと今年は時間取るの難しいんで、来年一番に神野さんに時間取るって約束しますから」

 本当だな!?年末年始で心変わりなんてしないでよ、頼むから!あたしは仕方なく微笑んで、年始一番のアポを取り付け、手帳に書き込んだ。

 そして持参した来年のカレンダーをその企業を走り回って顧客の皆さんに配る。

 今年もお世話になりました!と明るい笑顔を声も共に届ける。

 営業も6年目で新人の頃から通う職域だけあって、ここの人たちとは顔なじみもいいところなので、皆親切な挨拶を返してくれる。居心地の良い会社だった。

 10日前、大きな経保を失ってから、あたしは走り回ってそこそこ大きな契約を4件頂くことに成功した。その内2件はこの会社内から頂いている。挨拶周りは丁寧にするべし。

 その4件に、新人君からの1件で今年を終えるつもりだったのだ。12月分はノルマ達成で、来年の1月分として2件入れている。この1件で、もう次の記念月、2月戦に入るつもりでいたのに~・・・。

 そして残り少ない今年はもう幼馴染や女友達と遊んで過ごし、来年早々から気持ちも新たにまた経保を狙おうと思っていた。・・・予定は、あくまでも予定よ、ね。

 あーあ、ムカつくぜ、クリスマス。いらねーよキリストの誕生日なんて。あたしはキリスト教徒じゃねえしよ!

 去年まではしっかりイベントとして楽しんでいたくせに、彼氏のいないあたしはそんな事を思いながら曇り空を見上げる。

 個人的に一人記念月をしていたから気付かなかったけど、確かに街は彩りも鮮やかにどこもかしこもキラキラと輝いている。昼間からこれなんだから、夜はもっと煌びやかなんだろう。


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