「電話くれたら車で迎えに行ったのに。
あ、ケータイも置いてきちゃったんだっけ!」
「……うん」
「――黒川さんは笑ってらしたよ。
次回もお待ちしていますってお伝えくださいって。
あの人、ほんと上品でステキねぇ。礼儀正しくて。若いのに」
「……」
(次回――?)
そうだ。
次回も行かなくちゃいけないんだ。
すっかり忘れてた。
どうしよう。
どうしたらいいのかな。
あたしの頭は急に混乱しだす。
あの後薫さんに会ってから、「あれは怖がるほどでもなかったんじゃないか」なんて思ったけど。
薫さんの家を出て一人になると、やっぱりあの異様な目つきが脳裏をちらついて。