恋なんてミステリアス
第六章 幸子という女
 電話の向こうの声は幸子が不在である事を伝えてきた。真理恵が用件を細かに説明すると、本人の携帯の番号を教えてくれた。何と無用心な。真理恵は、これは自分の親にも有り得る行動であると考え、後で注意を施しておこうと思った。 
 幸子の母に先に一度電話を入れておいて貰えないかとお願いしてから20分が経過した。もうそろそろ良い頃合いだ。真理恵は、携帯に登録していた番号を押した。  
「はい、入江ですけど」
「同窓会の連絡を頂いた村下真理恵です」
 真理恵がハガキを返送出来なかった理由を簡単に説明すると、幸子は気にしなくても良いと言った。どうして私に案内をと聞くと、それは会ってから話をすると言われ、その瞬間に参加する事が自動的に決定してしまった。しかし、真理恵はそれでも構わなかった。何故なら、電話した時点で参加の意思があった事に自分で気付いていたからである。
 それでも様々な憶測は後を絶つ事を知らず、狐につままれたような正月は雲の流れのように静かに過ぎ去っていった。





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