seven kisses
彼は固まったままの私をふわっと包み込むように抱きしめた。

そして、耳元で優しく囁いた。



「嘘じゃないから。」

「へっ？ あ、う、うん........。」



恐る恐る彼の体にもたれかかり、背中に腕をそっと回してみた。

すると、彼が私をしっかりと抱きしめた。



しばらくそうしていたら、少しずつ心が軽くなっていく気がした。

何なんだろう、この感じは。

ドキドキするのに、何だかすごくホッとするような..........




私はこうして優しく抱きしめてくれる人を待っていたのかもしれない。

意地っ張りで素直じゃない私を、甘やかしてくれる存在を。



いつの間にか自分の周りに張り巡らせていた、見えないバリアが溶けて行く。

私の中に、彼の温かい気持ちがじんわり広がって行くのを感じる。



だから、強がらなくていいんだよね。

頑張り過ぎなくていいんだよね。

私はもう一人じゃない。

あなたはちゃんと私を見ててくれる。

いつも味方でいてくれる。



それがわかった今日は、大切な記念日。

二十代最後の誕生日に神様が私にくれたのは、何より最高のプレゼント。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ


< 50 / 190 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop