「ちょっと水城さん。」

「何?」

「来て。」


またか。

私は何も悪いことをしていないのに。

普通に生活をしているだけなのに。


「私の彼氏取ったでしょ?」

「取ってません。」


一週間に一回はこういうことを言われる。

特に何もしていないのに。

て言うかまずこの人の彼氏って誰?

この人自体知らない。


「あんた他の人の彼氏も取りまくってるらしいじゃん。」

「だから取ってない。」

「ふざけないでよ!」


相手が私を叩こうと手を挙げたのが分かった。

目を瞑り、その衝撃に耐えようとする。

でもいつまでたっても痛みは起こらず恐る恐る目を開けると眼帯をした男の人が彼女の手を掴んでいた。


「なっ、なにすんのよ!」

「こいつ取ってないって言ってんだから許してやれば?」


そう彼が呟くと私を叩こうとした彼女は手を振り払って走ってどこかへ行ってしまった。


「あ、ありがとう。」

「まじでお前あいつの彼氏取ってないの?」

「取るも何もあの人知らないしあの人の彼氏も知らない。」

「あっそ。ならいいや。じゃ。」


立ち去ろうとする彼のカーディガンの裾を掴むとなに?と素っ気なく返された。


「あんた…誰?」

「は?」

「どのクラス?」


顔だけこちらを向けていた彼はため息をつきながら私の方を向く。


「わかんないの?」

「うん。」

「2-4、志賀。」

「同じクラス?」


そうだよ、とちいさく笑いながら言う志賀に私クラスの人と話さないからわからないの、と返すとそういえば誰とも話してないな、とこれまた素っ気なく。


「なんで?」

「みんな私が男好きの尻軽女だと思ってるから。」


小さな声でそう言うと、志賀は目を見開いた。

このことを知らない人がいるなんて思わなかった。


「それ、嘘だろ。」

「え?」

「まず水城が男好きには見えない。むしろ男嫌いそう。」


なんでこの人、分かったの?

今までこの学校で分かってくれる人なんていなかったのに。


「当たったな。」

「なんでわかったの?」

「なんとなく。そろそろ授業始まるから行くぞ。」


志賀は私の腕を引いて教室へと歩き始めた。

面白い人。