まだ夕焼けの名残が、海と空との境目に綺麗なグラデーションを描いていた。
 うっとりするような光景も、彩は全く見ていない。
 車は喫茶店『free‐time』の裏にあるプライベートの駐車場に停車した。
 荷物も下ろさずに彩はすぐに車を降りて、だが何故か家には入らずにそのまま海側の道路に出た。
 そこには諒が立っている。


「お帰り、美樹ちゃん」


 店の入り口付近で、悠が声をかけてくる。


「買い物、全部済んだ?」


 いつもの穏やかな口調なのだが、どこか張り詰めた空気が漂っている。


「何かあったの?」


 段々暗くなっていく空。
 海風が美樹の髪の毛をすくい上げ、それを手で押さえる。


「うん。美樹ちゃんは、店の中に入ってて」


 悠が言いながら、美樹の腕を掴んで店の方に押しやる。
 やっぱり、何かあるのだ。
 いつもはもっと穏やかなのに、こんなに有無を言わせないような悠を見るのも初めてだ。
 美樹は黙って、店の中に入る。

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