異人乃戀

現実日常


 如月湖阿(きさらぎこあ)は一人教室で、箒(ほうき)片手にため息をついていた。

 何故、授業が終わり、ほとんどの生徒が部活や帰宅をした中、掃除を一人でしなくてはならないのだろう?
 何が悪かったのだろうかと必死に考え、頭から絞り出そうとするが、何も出てこない。


 掃除のフリをしながら窓の方へ行くと、窓を開けた。すこしじめじめした、しかしどこか心地良い風が湖阿の傍を通り抜ける。

 帰宅部の湖阿はいつも早々に帰ってしまうため、放課後学校にいることはあまりない。なので、この独特な放課後の雰囲気に触れるのは初めてだ。
 この人のにおいが微かに残った誰もいない教室は、誰かまだ居るように錯覚させる。

「早く帰りたいのに……。……ざけんじゃねー!」

 湖阿の叫び声は教室に響くだけで、すぐに消えた。残った虚しさは湖阿をさらに腹立たせる。
 箒を床にたたき付けようとしたが、廊下を歩く音がしたのでなんとか抑えた。


 この怒りの力を掃除に向けようと、少々荒っぽく箒で掃き始めるが、すぐにやる気がなくなる。


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