月の大陸
キャラ設定を間違えました。
エアリエルはミランダを見つけると勢い良くその首に抱きついた
もちろんその反動に耐えきれなかったミランダの体は
勢い良くベッドへダイブする


なななんだぁ?!

美しい外見とは裏腹にすさまじい力でミランダの首を絞め顔を
こすりつけてくる

「すごく心配したのよ!?急に倒れるなんて今まで無かったじゃない。
本当に目が覚めてよかった。よかった。」

微かに震えているエアリエルの体を感じて葵は
ミランダとエアリエルが両親は無く
辛い過去を背負っている設定にしたのを思い出した

唯一の肉親に何かあったらそりゃ心配だよね…

震えるその背中にそっと手を回した
華奢な体が今は痛々しい

「心配掛けてごめんね。」
もう大丈夫よ?今度からはもっと気を付けるわ。

…大丈夫、あなたを一人になんてしない。」

最後の言葉はミランダではなく
葵としてのこの世界を作った者としての言葉

前の世界に戻れたら必ずあなたは幸せになれるようにするから

背中にまわした手で小さい子供をあやすようにポンポンと優しく叩く
エアリエルからは小さな泣き声が聞こえていた


エアリエルが落ち着いてから二人でバルコニーでお茶を飲んだ
ミランダの部屋は最上階で眼下には広大な森が伸び
その先は海を挟んでうっすら大陸が見えた

自分で考え出した世界なのに実際に目で見ると壮大だなー

ミランダはのんきに考えながらお茶を飲んでいると
フッと何かの気配を感じて思わず手を止めた

気配を感じるのは森の方
そちらの方向をじっと見つめていると
いつの間にか対面に座っていたエアリエルが隣に並び同じ方向を注視していた

「…エアリエルも感じるの?」

「うん。
私はこの森の魔法使いじゃないから気配は薄いけど…感じる。
精霊でも聖獣でもない…微妙な魔力…。」

エアリエルの燃える様な紅の瞳の色が一瞬濃くなった
それはエアリエルが魔力を強めている証拠である
しかし
ミランダにはこの気配が誰の者かすぐにわかった

「…これは人間だわ。しかも二人。
でも、普通の人間じゃない…森の結界に気付いている。」

言いながらミランダは考える

私…この後どういうストーリーの流れを考えていた?
…確か執筆したのはさっきの場面まで…
その後の流れはネタ帳に書いておいたはずだけど

考えているうちに人間が動くのを感じて思考を戻す
どうやら、森の入口を探しているらしく森の前をぐるぐる動いている

「どうする?」

エアリエルの問いにミランダは考えた

普通の人間ならめったに近づかないアルコルの森
森の中は魔力で満ち、普通の人間が悪戯に踏み入れればまず森からは出られない
それに加えて精霊や聖獣がいる
彼らは人間嫌いなため、魔法使い以外の人間を見つけたら惑わしたり
下手した命を脅かしかねない

このまま放っておいたら入って来ちゃいそうだしな

「…私ちょっと行って来るわ。
なんか用があって来たのだろうし、このまま勝手に入ってこられても困るし。」

「ええ?!
姉さんが自ら行くの?しかもどんな人間かのわからないんだよ?
危険じゃない!…私も行く!!」

「はあぁ?」

てっきり止められるのだと思っていたミランダは声を上げた

「だって、姉さんは病み上がりなんだし。
相手はどんな人間かもわからないのよ?賊だったらどうするの?!
心配で一人でなんか行かせられないわ!」

「いや、賊だろうがなんだろうが一応私たちは魔法使いで
しかも魔女なわけだしどうにでもなるでしょ…。」

「ダメよ!
私も行く!それじゃなきゃ行かせないから。」

ガンとして譲らないエアリエルはしまいには杖まで取り出して

「姉さん一人じゃ絶対にだめよ!」
と拘束魔法まで書けそうな勢いだ


あれー?!
私こんな風に設定した?エアリエルはもっとこう
おしとやかで…
お姉ちゃん思いで…

『あ、でもあんまりおしとやかでも詰まらないからシスコンの猪突猛進型で
ちょっと残念な美人にしよう♪』

あー!あれか!あの時か!

ミランダはキャラ設定の時の自分のセリフを思い出して
ますます当時の自分を呪いたくなった

そして盛大にため息をついた後ミランダは観念した
「わかった。一緒に行こう。」

ミランダの答えに満足したエアリエルはすぐに転移の魔方陣の式を構築する
術式は複雑なもので普通の魔法使いならその場に造り出すだけで
最短で一日かかるがエアリエルはその強力な魔力と天才的な技術で
わずか数秒たらずで造り出した
もちろん、双子なのでミランダも同様である

「さ、行きましょう。」

エアリエルに促されるまま魔法陣に立つ
瞬きした次の瞬間には二人は森の外に立っていた

初めての感覚にミランダ(葵)内心ドキドキと驚きで大騒ぎだった

うわー!初めて転移しちゃった!!
思ったよりも衝撃が少ないし本当にあっという間に移動しちゃった!!
すごーいい
魔法使いの二人のスキルを超人レベルまで上げて設定した自分ナイス!

人間は時に物凄くゲンキンである


「姉さん、居たわ。あの方たちよ。」

エアリエルの声に意識を戻したミランダは前方数十メートル手前に
豪奢な馬車を見つけた

そしてその前には二人の男が立っている

男たちはこちらの存在に気が付いたのか少し驚いたようにミランダたちを見ると
すぐさま駆け寄ってきた
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