シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

合図 玲side

 玲Side
***************



『お願い、僕の代わりに…皆を護って』


多分、あの時――。

煌の掌の上で苦しそうにしていた小リスと目があったあの時――。


『護りたいんだ、皆を……』


僕が共鳴のように感じたのは、僕の心であると同時に…小リスの心だったんだろう。


『僕の身体を使っていいから』


あの瞬間から僕は決めていた。

僕も共に戦おうと。


僕が櫂達の側に行くことでさえ可能か不可能かわからない……いや、常識的に考えれば限りなく不可能で、さらに小リスの体を操るとは、全くSFファンタジー…空想の世界。

だけど僕はしなくてはならなかった。

僅かな望みが成功する可能性を高めるためには準備時間が必要で、その時間がかかりすぎてしまったがゆえに櫂達は仲間をひとり失った。

あの式神は小リスの命を繋ぎ止め、そして更には僕に力を貸した。

悟っていたのだろう、僕達が見ているのだと。

それはある種の、召喚術。


僕の意思の転送は、小リスとあの式神の受け入れ意思があってこそ、可能になった。

そして百合絵さんの存在。

彼女が持つiPhoneが櫂も持っているのだと、それを知ったのは…僕が密やかに0と1の力にて、僕が作った百合絵さん用特大スマホにメールとして、文字信号を送っていた時。


僕が動けば、警戒心を抱いた周涅は裏世界に圧力をかけるだろう。

それを避けるためには、此の場に居ない第三者の動きが必要だった。

そして彼女は、電気の力を受けても平気な力があるならば、僕が力尽くで電脳世界への扉をこじあげたとして、そこからの反撃を表世界で受けるという最悪事態になった場合、その力は皆への被害を食い止めるのに大いに役に立つ。

彼女がどうしても僕の近くにいる必要もあり、この建物内に来ていた彼女を誘導していたのだった。


『僕があちら側に行くには、専用ルートが必要だ』


だがそれが難しいのだと、僕は百合絵さんに相談していた。

百合絵さんのメールは、あるボタンを押せば僕だけがわかる信号に変換されて、僕に伝えることが出来る。

これは、僕や由香ちゃん以外に、0と1の言葉を読み取れる者達が出現した時用の、仮機能でもあった。芹霞から取り戻した腕時計。そこに流れる0と1を逆転させて読めばいいのだけれど。


僕が必要としていたのは、僕専用ルート。

電脳世界を通るとなれば、そこにいるらしいZodiacや虚数の抵抗もある。

それを躱して、瞬間移動のように素早く行き着く為には、近道ともなる…僕専用の通路が必要だった。

それは、網の目のようになって様々な情報が不特定多数より閲覧出来るネットの世界でいえば、外部を遮断した独自サーバーでの専用回線をひいて、外部閲覧者を排除させることに近い。


高速移動が可能なネットの世界を利用しながら、外部より閲覧不可能な別ルートを開く。

それが僕の目論んでいたことだった。
< 1,279 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop