シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

推測 櫂Side

 櫂Side
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ゲームの意義は何か。


それを考え出したのは今今の事じゃない。

この世界に来てから、ずっと考えていたことだった。


――玲くんが好きです。


何故緋狭さんが、意識下に潜ってまで、荒れた俺を静めて…裏世界へ行けと示唆したのか。

どうしてその使いとして、この情報屋が使わされたのか。


また、俺達に同行している三沢玲央。

彼もまた氷皇の使いだという。


俺達は――

紅皇と氷皇の2人に押されて今此処に居る。


五皇の動きは必然。

必然に導かれたゲームなら、必ずこのゲームも意味があるのだと思っていた。


ゲームと称したものの共通点。


それは――"時間"。


時間に攻め立てられ、俺達は翻弄されてきたんだ。


イロオニでは秒刻みに変わるルール。

次の神崎家でのゲームでは、偽の氷皇により都度強制適用される定義(ルール)が、俺達の五感を狂わせた。


その第2ステージは8年前。

思い出したくもない場面が舞台で、8年前の凍った時間がループしていた。


そして最後は、筆記とテトリス。

筆記と移動とテトリスと、違えた場所で定められた時間を1つに連携させられた。

知覚する体内時間とこの舞台での時間の流れは微妙に違い、また…確実性を狙って必要とした"時間の余裕"は、短い制限内では意味がなく、量を捌(さば)く為には、"時間を急かす"必要もあった…そんなゲームだった。


狂わさせられた時間感覚。


それに流されて惑わされたままであれば、今も尚ゲームが抜け出せないか、敗退していたと思うんだ。

そしてまた、1時間で3つのゲーム制覇というものは、"本質的"な縛りにはなりえず、ただ俺達を焦らせる為の材料だったのだと思う。


「ゲームによって、俺達にとって"絶対的"なはずの時間感覚は狂わされていた。それに気づかず、"時間"という名の"固定観念"に…ただ流され翻弄されて終わるか、或いはそれに順応して制御していくか。

時間を狂わせられたことにより、求められていたのは…順応力、柔軟さ。ゲームに支配されるのではなく、ゲームを即時に組み立て直し、支配出来る力」


そう俺が言い切った時、


「この馬鹿犬!!! さっさと僕を助けろよ!!!」


レイの、悲鳴交じりの声が聞こえてきた。


直前の"死にそう"の訴えを聞いて、煌はレイを助け出そうとしたのだが、帽子に手をかけ…傍目押し潰そうとしたような格好のまま、俺の結論を聞いて呆けたように動きを止めていて。

中途半端な姿勢だから、レイが外に出るに出られず、時折…帽子の縁から覘く小さな手と足が、力なくぱたぱた動いているのが見えた。

煌同様…やはりレイを助け出そうとしていた翠も、俺を見たまま固まっている。



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