魅惑のくちびる

「確かにキスしたら気持ち良さそうね。女のあたしから見てもそう思うモン」

一つ上の先輩の梶原さんが、わたしの唇に視線を向けた。

一つしか違わないのに、梶原さんの方こそとても色っぽくて、このアンケートでは1位になるって予想していたのに。

「彼氏、かわいくてたまらないんじゃない?キスをよくしたがるでしょ?」

小声でとは言え、飲み会の席でそんなことを聞いてくるから、わたしの顔はきっと他の酔っぱらい社員たちみたいに赤くなっちゃってる。

「……そんなことないですよう」

したがるというより、キスでご機嫌が直ることはよくあるかもしれないけど。

そんなことを言おうものなら、またあの人たちの格好の肴にされてしまう。


わいわいとまだ盛り上がっている広瀬くんたちを眺めながら、手でうちわを作ってパタパタとあおいだ。
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