全ては朝焼けがくる前に。





心臓が止まるかと思った。



今思えば、お互い酔っていたってだけなのに。



あたしのことを聞いてくれた、って事実に、嬉しくなった。



『いないですよ』



それでも冷静な振りをして、グラスに口をつける。



『ふーん。モテそうなのに』



なんで、



なんで期待させるようなこと、言うの??



こうなったらとことんやってやろうじゃないの。



奥さんがいたって、関係ないわ。





部長の隣に座り、バスローブの袖をきゅっと握った。





『好きなんです、部長が』





これくらいいいでしょ??



貴方が言え、って言ったようなものだもの。



部長の瞳をじっ、と見つめた。



その刹那、触れる唇。





あの日のあの夜、



あたしたちは初めて、禁忌を犯した。




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