君と、世界の果てで

(1)広すぎた空



陸の残したガラクタを処分して。


正月には、実家に帰った。


喪中だからか、例年より静かな、まったりした正月だった。


親父は、母親から話を聞いたのか、聞いてないのかわからないが。


紗江やバンドの事には何も触れなかった。


そして。


何故か俺は、またここにいる。


海辺の家に。


2週間ほど暮らしてみたら、意外と一人でいるのが快適な事に気づいたのだ。



「ヨシ」



卒論発表の準備も終わった。


ノートパソコンを閉じて、コーヒーを淹れるため、腰を上げた。


冬休みも、もう終わりだ。


早く、決着をつけなくては。



そう思った瞬間、ビー、ビーと携帯が鳴った。



「もしもし……あぁ。……わかった」



ついに来た。


紗江からの呼び出しだ。


コンロの火を止めて、コートを羽織って。


吸っていた煙草を片手に、家を出た。


< 144 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop