君と、世界の果てで
呼び出されたのは、紗江の自宅だった。
うちの実家より一回り大きな、客をもてなす事を前提にした家。
無駄に余った駐車スペースに、車を停めた。
他に車がないところを見ると、今日は本人以外は留守らしい。
呼鈴を押すと、紗江は少し間をおいて登場した。
「どうぞ」
固い表情のまま、広いリビングに通される。
促されるままソファに座ると、コーヒーを運んできた紗江が、向かいに座った。
「何で呼び出したかわかる?」
「別れ話だろ」
紗江が、キッとこっちをにらむ。
「別れたがってるのは、そっちだけでしょ。浮気者」
「は?浮気?」
「先月、ファミレスで、あの巨乳ちゃんといたくせに」
あぁ……?
そう言われれば、若い女のグループが、こちらを見ていた気がする。
あれは、紗江の知り合いだったのか。
俺の顔を、知ってたんだな。
「アレは、ただのボーカルだ」
詳しい説明も、面倒くさい。