BRACK☆JACK~序章~

【2】




【2】



 ほんっっとうに。

 今日は、暑かった。

 信じられないくらいに。

 そんな中、一仕事をして、冷たいシャワーを浴びて。

 …もちろん、その後は。



「うっわ!! 何これ、うめェ~!!」



 一気に空になったジョッキを、どんとカウンターに叩きつけて、ミサトは髭面の店主におかわりを注文する。



「やっぱ、暑い日のビールって最高だね、オヤジ」

「あんたのほうがオヤジと化してねェかい、ミサトちゃん?」



 店主は苦笑しながら、おかわりのジョッキをミサトの前に置く。

 ミサトのマンションから程近い、小さな焼き鳥屋。

 ここの焼き鳥だけは、世界一うまいと思う。



「この美貌のドコがオヤジなのよ」



 憮然として言い返す。

 その時、店の入り口の戸がガラガラと開いた。



「いらっしゃ…」



 店主はそう挨拶をしようとして、はたと止まる。

 たった今、戸を開けた男はキョロキョロと店の中を見回して。



「いねェな」



 そう呟くと、パチンと戸を閉めて出て行った。



「何なんだ…?」



 呆然と呟く店主に、ミサトは一万円札を店主に渡す。



「おつりは今度来た時にまわして!!」

「…はいよ」



 釣りはいらねェ、じゃないのかと苦笑しっぱなしの店主をよそに、ミサトは慌てて店を出て行く。

 ミサトは通りに出て、さっきの男の姿を探す。

 すると、あちこちの店に顔を出してはフラフラと歩くその男が目に映った。

 気付かれないように、ミサトは遠巻きに後をつける。

 これだけ人が多い中でも、すらりと長身の、金髪に近いくらいの茶髪の男を見失う確立は少なかった。
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