柚は大きな木々で囲まれた森のような場所で横たわっていた。


目を覚ますと軽い眩暈と頭痛がした。


何かに吸い込まれるかのように吹っ飛ばされたような気がするけれど、幸い怪我はないようだった。


上半身だけ起き上がり、辺りを見渡す。


柚がいた自然公園とは全然違う所に見えた。


野生の獣が出てきてもおかしくない、奥まった森の中にいるようだった。


 すると、ガサリと落ち葉が踏まれるような音がして、いつ獣が出てきてもおかしくないと思っていた柚は思わず背筋が凍った。


音がした方向に振り向くと、そこには息を荒げ走ってきた、か弱そうな絶世の美女がいた。


 薄紫の裳に帯を締め、羽衣のような領巾(ひれ)をショールのように肩からふわりと垂れ下げている。


長い黄金色の簪の垂れ飾りが、色素の薄い、透けるような白い顔の前でちらちらと揺れていた。


 あまりの美しさに、天女が迷い込んだのかと思った。


絶世の美女は、柚の姿を見ると息を止め目を見開いて驚いた。


瞳を交わすこと数秒間、お互い何も発することもできずに見つめ合っていた。


しかし、遠くの方で馬の蹄の音がして、美女はその音を聞くとビクっと肩を上げ、慌てて走り去ってしまった。

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