暁は六畳ほどの部屋に黒木の大きな机と対峙し、繊細な細工が施され背もたれと肘掛がある椅子に座りながら、黙々と仕事をしていた。


机には山盛りの書類。


それを上から一枚ずつ取って、一瞥するように速読してから帝の判を押す。


そんな代わり映えのしない単調な仕事を、すでに数時間やっているにも関わらず、山盛りの書類はまだ半分もなくなっていなかった。


それもこれも、帝の政を放り投げ、変装して平城宮を抜け出したことが原因なので、暁はげんなりしながらも、物凄い集中力と速さで仕事をこなしていた。


 それだけでも大変だというのに、帰ってきてから暁の書斎にはひっきりなしに大臣クラスの役人が次から次へと血相を変えて訪れて来ていた。


落ち着いて仕事をするために、わざと小さな室にしてもらった暁専用の書斎に、今は五人の役人が入ってきている。


太政大臣に左大臣に右大臣、それに正三位の役人に見張り役の貴次がいて、狭くて居心地が悪かろうにと思うのだが、役人たちは帰ろうとはしなかった。


役人たちはめいめい好き勝手なことをまくし立てている。


暁にとっては耳障りで仕方がないのだが、身分が高いので無下にすることもできない。