ALONES

秘めたる感傷


  * * *


蝋燭が揺らめく、王の部屋。


国王は豪華な机に手を置き、椅子に腰を下ろしたままでレイチェルの報告を静かに聞いていた。

時折見せる笑顔、悲しそうに下がる眉毛、その様子を部屋の後方で見ていたランベールは、ただその様子を見守る事しかできなかった。



――アルヴァスティン様は幸いにも“まだ、ご健在だった”ようだ。


しかし病のは着実に体を侵し、蝕み続けている。

邸宅の二階にはもう上がれないのだと、彼は告げたらしい。


レイチェルの手が震えているのが分かった。

話し続けている内に、感極まってしまったのだろう。


時折、声を詰まらせて、すみませんと涙をぬぐうその仕草は、儚くて切なくて、こんな時に不謹慎だが、可愛らしい。


レイチェルは彼に食料と、イゼリオ公国の薬、大量の国報紙を渡し…木製の船を一隻置いてきたと話した。


そして最後にただ一言、



「殿下は変わらず素敵なお方でした。」



嗚咽をこらえながら告げ、締めくくる。


言い終えてからも尚、甲冑で覆われたその華奢な体は小刻みに震えていた。

ここからでは見えないが、きっとその金色の瞳は朝露のように濡れているのだろう。



静かな空気が流れる中、王は、

「すまなかった。」

と呟き…彼女を優しい眼差しで見つめた。

それが何のどこまでを表しているのか、簡単には理解できなかったが、



「とんでもありません、陛下。」



レイチェルは何度も首を横に振る。


きっと、そこには自分が介入してはいけない何かがあるのだろうと、ランベールは少しだけ目を伏せた。
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