remember
 思い出をかき消すように電話の着信が鳴った。彼からだ。
「はい。ううん、同窓会は夕方から。ちょっと寄り道だよ……ううん、浮気なんかしてないよ。するわけ無いじゃん……うん、じゃあね」
 電話を切ると、センパイが不快そうに眉根を寄せている。
「カレシ?」
「あ、うん……」
「ソイツのこと、愛しているんだ?」
「……」
 なぜ答えられなかったのだろう。
 ここへ来たのは苗字が変わる前に思い出に別れを告げるためだけだったのに、がっちりとした肩が少し下がっているのを見ると……
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