「私の母が自殺した原因は、結局わからないまま捜査を打ち切ったんですよ」



 訥々と、後藤さんが語りはじめた。



「偶然にも、そらくんと同じ歳の頃でした。しかも、三つ離れた妹がいましてね。……同情と言えば聞こえはいい方です。私は、母の残した想いを知ることが出来なかった自分を、そらくんたちに重ねていました。情けないですね」



 自嘲じみた笑みを零して、後藤さんは視線を落とす。

 その姿は、刑事ではなく息子として。

 母親の想いをその胸に抱くことが出来なかった悔しさを、己を、恨んでいるようだった。



「すみません。こんな私情、話すつもりじゃなかったんですけどね」



 ぽりぽりと頭を掻いて困ったように笑う彼に、僕は小さく首を横に振る。

 僕だって、過去を思い出させて彼を苦しめるつもりは毛頭なかった。

 けれど、後藤さんが披瀝してくれた以上、僕には母親の残した想いをこの胸に抱く義務がある。

 さすがにひねくれ者の僕でも、純真な心で接してくれる人間に悪態などつかないし、同等の想いを持って彼と付きあっていきたい。



 後藤さんの親孝行が僕の母親の想いで成せるのならば、尚更だ。



「必ずや、解明致しましょう。二条さんのお兄さんの件はこちらにお任せ下さい」

「……お願いします」



 組んでいた腕をほどき、後藤さんは白い歯の羅列を覗かせて笑う。

 いろいろと思うことはあったけれど、僕は特に話を掘り返そうとはせず、たった一言そう呟いた。



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