河の流れは絶えず~和泉編~
其の参 きぬたやへ

ひとつ

店に入れば、いつもの活気が体に纏わりついた。

俺を見て挨拶をする後輩や同級は俺の後ろを付いてくる彼女を見て、えっと声をあげた。

とうとう彼女が落ちたのか、という落胆の様子が見て取れ、俺としては何やら複雑な心境だった。

中には俺に二言、三言話しかけてくるやつもいたが、適当にあしらった。

こういうときは下手なことを言うもんじゃあない。

ただ、ざっと見て、彼女に熱を上げている奴が2,3人いて、こいつらが絡んできたらやっかいかもしれないと、さっさと座敷へ上がろうとしたら、ここの女将さんに声を掛けられた。

「あら!浩さん、後ろの別嬪さんはどなた?ちょいと紹介しとくれよ。」

おばさんはにこにこして話しかけてきた。
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