約束なんて、いらない。

 あたしが言うと、あなたは困ったように笑った。

「好きじゃない、約束なんて」

 あたしはいつまでもこどもで、あなたは大人で。それが、やけに悲しくさせる。

「帰ってこないわけじゃ、ないんでしょ?」

「そうだな。先の話だけど、必ず帰ってくるよ」

 その必ず、はあたしだけのためではないと知っている。

 でも、きっとあたしのためにも言ってくれている。

 そう、わかるから。

「だったら、約束なんていらない。帰ってきてくれればいい」

 その時は結婚しよう、なんて約束はいらない。帰ってきたら、ふたりで決めればいい。

「そもそも、付き合ってもいないじゃない」

 あたしが言うと、あなたは途端に真面目な顔をした。

「僕なりの誠意のつもりだ」

「あなたらしい」

 あたしが笑うと、あなたも笑った。

 帰ってきたら、ふたりで話そう。これからのこと、ふたりのこと。

 だから、約束なんていらない。きっと、叶うとわかっているから。