恭一が駅前に着いたとき、すでに近藤は到着していた。


「ごめん。近藤の方が早かったんだな。」
「いや、俺も来たところだ。」
「そっか……」
「それで?急にどうしたんだ?」


訊いてくる近藤を前に、恭一は小さく息を吐き出す。



「デート………」
「え?」
「デートしようと思って」
「………は?」
「だから!恋人らしくデートしようと思ったんだよ!!」



思わず声を張り上げてしまった恭一は慌てて口を塞いだ。


数人の通行人が振り向いたものの、大して気にしてはいないようだった。



「デート……?」
「そうだよ。悪いかよ。」



固まっていた近藤が途端に微笑んだ。



「悪くない。全然悪くない。」
「よ、良かった。じゃあ行こうぜ。」



歩き出した恭一は、動こうとしない近藤に振り返った。



「どうした?」
「デートなのに手は繋いでくれないのか?」



至って真面目に訊いてくる近藤に、恭一は真っ赤になって反論した。



「ばっ、ばか!んなこと出来るか!!こんだけ人居るところで!」
「気にしなくていいのにな。」



どこか面白くなさそうに近藤は歩き出した。



「で、どこに行くんだ?」
「えっと……映画とか?」
「映画?」
「ほら、デートの定番だし。この前観たい映画あるって言ってたろ?」



近藤と交わした会話の中で、観たい映画があると言っていたのを恭一は覚えていた。



「よく覚えてたな。」
「そりゃ……」


近藤の事だから、という言葉は恥ずかしく、口にはしなかった。



「映画でいいか?」
「ああ、かまわない。」



嬉しそうに近藤は頷いた。