私はお母さん子だ。常に母の背中を見て育ってきた。
父親は昔から家にいたりいなかったりで、いつの間にかどこかに消えていた。女と出て行ったのかもしれないし、単に離婚しただけかもしれない。強く優しい母が何故あんな男を選んだのかといつも不思議だった。 

玄関に入った途端、情熱的に唇を合わせてきた雅也は「続きは、明日かな」と残念そうな微笑だけ残して仕事に戻っていく。
ふと見ると下駄箱の上に私の部屋の合鍵が残されていた。

今追いかければ渡せるかなと思ったとき、玄関がノックされた。

「雅也、鍵忘れてる」 
 
戻ってきたのだと思ってドアを開けた瞬間、汚れた格好の男が目に入った。