アドラーキャット


「……怒ってる?」

怖い。

何考えているのか分からないのが一番怖いんだよ荻野目くん。
恐る恐る尋ねれば、ふっと顔を上げ荻野目くんが真正面からこちらを見つめてきた。
相変わらず、綺麗な顔をしている。

「……怒っても、叱れないじゃん。」

「は?」

「俺、彼氏じゃないから、怒れない。」

「え、あ、うん。そうだね、確かに。」

また下を向いて荻野目くんは鍋を食べ始める。

重苦しい沈黙が続く。

「……みずき。」

「はいっ!?」

さっきもあったようなやり取り。


慌てていたので白菜を取り落としてしまった。
ぼちゃん、と大きな白菜が鍋に落ちる。

「さっきのとか、怒れる権利が欲しい。」

「………は、はぁ。」

怒ってるのか。
結論で言えば、荻野目くんは怒ってるのか。

私はどうすることもできずただ荻野目くんを見つめる。

ふー、と一息ついた後、荻野目くんは滅多にない力強い声でこう言った。






「扱いはペットでいいから、彼氏にしてください。」




「……。」






荻野目くんの告白が前衛的すぎて理解出来ない。


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