心拍数
1章 病気と周りの目

 3限が終わって、私は憂鬱な気分だった。
 4限は体育だけど、薬の副作用のせいで体調が良くない。吐き気がしてしんどい。
 小児ガンを患い、半年前から病院に通っている。
 抗ガン剤を打ちながら学校にも毎日ちゃんと来てるけど、ガンのことは先生以外誰にも言ってない。変に気を遣われたりしたくないから。
 
 もうすぐ授業が始まる。
 今日も見学にしよう。本当に吐いちゃったら大変だし。
 気持ち悪いのを我慢しながら、体育館へ向かった。


 体育館に着くとすぐ、小川先生の背中をみつけた。
 小川先生は体育の教科担当で、若くてイケメン。
 女子に人気があって、今も周りにファンの子が数人集まっている。
 先生に見学することを伝えようと近づくと、ファンの子たちが何かコソコソと話し、そして私の所に来た。
 「菜乃花ちゃん、また見学?」
 顔は笑ってるけど、明らかに嫌味ったらしい口調だった。
 「いつも休んでるけど、単位落としちゃうんじゃない?」
 「少しは運動しないと、身体に悪いよ!」
 「そうだよ、たまには運動しよ!」
 次々に言葉を浴びせられた。
 「うーん、じゃあ今日はやろうかな。」
仮病だと思われてるのか。それとも先生に優しくされた私に嫉妬して、意地悪しようとしてるのか。
 どっちにしろ、こんなのに負けたくない。悔しい。
 しんどいけど、今日は授業を受けることにした。
 「そっか。でも具合悪いなら無理しないでね!」
 そう言ってクスクス笑いながら、ファンたちはまた先生のところに戻った。
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