メインクーンはじゃがいもですか?
ヤブ医者にはお世話になっております

  【ヤブ医者にはお世話になっております】



 3丁目の『あなた野病院』は、看板がない病院だ。

 つまり、ヤブ医者のもぐりと言うことだ。

 そんな病院は危ないマンションの一室に構えてある。

 小型モニターが6台設置され、年中無休で監視されている。そんな病院内のなんちゃって診察台に葵は寝かされていた。

 その脇には虎と龍の絵の描かれた金屏風が不釣り合いに配置され、その裏にはパイプ椅子が二つ。

 白い召し物を召した男二人が、まるで開脚のように股を広げて座っている。

 一人は白衣の初老のおやじ。バーコードヘアーにグレーの色が入っためがね。にこやかに笑う左側の犬歯には金が巻かれていた。

 もう一人は白いスーツの男、霧吹だ。その無駄に長い足をこれみよがしに組み、クロコダイル風の型押しの靴を惜しげもなく披露していた。黒いシャツに赤いネクタイ、胸元にはこぼした赤ワインの染み。

 トン・・・と軽い音を立ててお粗末なテーブルの上に「1センチの幅」が置かれた。

「もうね、話しが早くて大好きですよこういうの」

 ヤブ医者は「1センチの幅」の紙の束の中の1枚を、親指と人差し指でつまみ、軽く振る。

「ふん・・・いやね、お得意様の霧吹さんを疑う訳じゃないんですよ、ただの習慣で・・・」


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