addict


暗い、暗い、どこまで行っても暗い。

いや、私は進んでなどいなかった。

浮遊感が現実でないことを悟らせる。

視覚から脳裏に写し出される色は黒。

否、これはきっと夢なのだから私の思考そのものが闇なのか。

それにしても嫌な感じだ。

指先の感覚が冷たいのに、その手が自分と繋がっていないような。

心と身体がバラバラに解体されたみたいな気分。

それにしては意識がハッキリとしている。

夢の中でこんなに自分を自覚したことがあっただろうか。

認識出来ない頭部を捻ってみる。

気味の悪い夢だ。

そう思った瞬間、上から引っ張りあげられるような感覚がした。

それから、優しい声。

きっと、彼だ。

私を助けてくれるのは、やっぱり彼なんだ。


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