ここずっと根を詰めてひと針ひと針思いを込めながら腹巻を縫い、ようやく完成すると、仕事をしているであろう晴明の部屋へ行き、思いきり襖を開けた。


「父様!完成したよ!」


「ああ、最近ずっとそれにかかりきりだったからねえ。ではこれからは私を構ってもらえるということかな?」


茶化されてぷうっと頬を膨らませた息吹がその場で帯に手をかけようとしたので、晴明は思わず筆を止めて訝しげに息吹を見つめた。


「息吹?何をしているんだい?」


「え?せっかく作ったんだからこれをしてるのを見てもらおうと思って…」


「いやいや、それはいいから今宵はそれを腹に巻いて眠るといいよ。何かいいことがあるかもしれないからね」


「はい。私なんだかこの地主神様から頂いた手拭いを触っているとすごく落ち着くんです。今晩はぐっすり眠れるかも」


腹巻を胸に抱いた笑顔満面の息吹が部屋を出て行き、いつまで経っても子供のように振舞う息吹に晴明の苦笑が止まらなくなっているうちに、息吹は風呂に入って身体をあたためると、身体を綺麗に拭いて腹巻を身につけた。


するとなんだか――お腹を中心にあたたかい波動が伝わってくるような気がして、何か御利益がありそうなそうでないような…

とにかく嬉しくてその場で何度かぴょんぴょん跳ねて、浴衣を着た息吹は部屋に戻ってすぐ床に横になった。


「地主神様…ありがとうございます。この腹巻、大切にしますね」


目を閉じると余計に腹巻からあたたかい波動が伝わってくるのがわかった。

これは実はものすごいものなのでは、と考えていたのに気が付けば眠りこけてしまい、晴明に肩を揺すられるまで爆睡。


「これ息吹、今日は十六夜の所へ行かずともいいのかい?」


「え、もうそんな時間!?た、大変!父様起こしてくれてありがとう!あのねこの腹巻すごいの!すごくあたたかくて不思議な力が…」


「とりあえず支度をしなさい。ふふ、話は牛車の中で聞いてあげるよ」


慌てて床から抜け出た息吹はまず厠へ行き、そして井戸水を汲みあげて手を洗いながら頭にひとつ疑問が浮かぶ。



「あれ?私…今月はまだ月のものが来てないかも。いつもはぴったり来るのに」



環境の変化のせいで少し狂ってしまっているのだろうか?

軽く考えていた息吹は、後で晴明に相談しようと思って慌てて身支度を整えた。

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