息吹との文のやりとりを許されて、各々がせっせと文を書き続けた結果――息吹のつわりが治まれば会ってもいいという晴明からのお達しにより、道長と義経、そして帝となる相模は平安町側の幽玄橋に立っていた。

だが相模は次期帝となるため平民に姿を晒すわけにもいかず、道長が手配した牛車の中で息吹を今か今かと待ち受ける。


「おお、来たぞ!…あれは妖か!」


山のような赤鬼と青鬼と何かしら言葉を交わしている息吹の姿を見れたのは久しぶりのこと。

…だが息吹は虎柄の大きな猫の尻尾をしっかり握っていて、それは誰がどう見ても妖だったので、道長と義経は警戒しながら牛車の前に立つ。


「あ、道長様と義経さん!相模!」


「息吹!やっと会えた!会いに来た!」


「あ、これ相模様!」


道長の制止も聞かず、御簾を払いのけて飛び出して行ってしまった相模を追いかけた道長と義経は、幽玄橋のちょうど真ん中で立ち止まった息吹の全身を眺めて何かが変わったことに気付いた。

それは…母としての息吹の姿。


「息吹…つわりが治まったと聞いて会いに来た。元気だったか?」


「はい。主さまが過保護すぎて今まで外に出られなかったの。道長様も義経さんも、相模も元気そうでよかった」


にこ、と笑った息吹にほんわか癒された面々が一歩息吹に近付こうとすると――


「それ以上息吹に近付くにゃ!」


「あ、猫ちゃん駄目!」


息吹の隣で顔を洗っていた猫又が突如鋭い爪を振り上げたので、咄嗟に道長が妖を斬ることのできる刀を抜いて応戦しようとして双方が息吹に止められた。


「旦那は…来ないのか?」


「はい。だって主さまが来ちゃうとみんな怖がっちゃうし、私も気軽に話せないから。相模、美味しい飴をあげる。ゆっくりできるの?」


「息吹が留まれる分だけここに居る!息吹…母親になっちゃうんだな」


少し大人びた印象の相模に甘い飴を差し出した息吹は、ほとんど膨らんでいない腹を撫でて自慢げに胸を反らした。


「そうだよ、お母さんになるの。お産は父様の屋敷でするから、赤ちゃんが産まれたら抱っこしに来てね」


その一言で、平安町にもう戻って来ないと思っていた道長たちは目を輝かせて顔を見合わせる。


「うん!絶対行く!」


そして話が弾んでしまい、主さまをいらいらさせていることに気付いていない息吹は後で雷を落とされる羽目になった。

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ファンタジー  妖怪    男目線  切ない  溺愛  きゅんきゅん 

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