花に、嵐
正直、美桜ちゃんの行動は理解できなかった。

朔ちゃんとの突然の婚約。解消。挙句、別の人とまた突然、婚約。

朔ちゃんと付き合ってたことも知らなかったけれど、結局別れた原因も知らない。

双方の両親がどんなに問いただしても、二人とも、理由を言わなかったから。

ただ、朔ちゃんはママのお弟子さんでいるには少々気まずくなってしまって、前ほど教室に来れなくなって、そうこうしているうちに空間デザイナーの仕事が忙しくなってきて、いつの間にかテレビにまで出るようになってきて。

気づいたら、ますます朔ちゃんは遠い人になってしまっていた。

それでも好きな気持ちが消えるわけじゃないから、朔ちゃんの迷惑も考えずに押し掛けたりしているのだけど。


………報われる気配すらない。



「そうそう、花菜。来週の土曜日は空けておいてね」

ママがさも今思い出しましたと言いたげにキッチンから話しかけてくる。

「―――え?…なんで」

「以前から言っておいたでしょう?お見合いよ。来週の土曜日ならあちらのご都合がいいらしいのよ」

そんな朔ちゃんへの想いは報われないまま、ふってわいたお見合い話は勝手に進んでいた。

「……私、行くって言ってないけど…」

「あらいやだ、まだそんなこと言ってたの?もうあちらには行くとお返事しましたよ」

いつの間に……。


ママの行動の早さに呆れる。

いくらパパと二人っきりになりたいからって、勝手にお見合い進めないでよね!

と、言い返したいけど、1言ったら10返してくるママに勝てるとも思えなくて、でも行きたくないからとりあえず押し黙る。

「ママ、そのことだけど……花菜はまだ大学生だし、お見合いは卒業してからでも遅くないんじゃない?」

私の代わりに美桜ちゃんが口を開いた。












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