SトロベリージャM
動き始めたジャム
2月も後半、寒いけれど、春の息吹や足音が感じられる季節。


春が待ち遠しくなる中、1週間前にその事件は起きた。


ある晴れた休日、いつものように、出来上がったジャムを小瓶に詰めているときだった。


いつも優しく鳴るはずのドアのベルが、防犯ベルにもなるんじゃないかと感心するくらい激しく鳴った。


勢いよく開いたドアの前に立っていたのは、ドライフルーツ屋の美代おばあちゃんだった。


美代おばあちゃんは、少し青白い顔で息を切らしながら、目を見開いていた。


「美代さん!!どうしたの!?」


かなり、慌てて走ってきたせいか、なかなか上手く喋れないようだ。


「み・・みのりちゃん、落ち着いて・・聞いとくれ・・よ。」


わたしは、美代おばちゃんの背中をさすりながら、次の言葉をを待った。


「あのな、さっき、今日の新聞を見たんや。そしたら、うちらの住んどる所に大型ショッピングセンター、大型エンターテーメーン・・エンターテイメート・・センターが建つんじゃと!!エンター何とかはよく分からんが・・。」


「エンターテイメントだよ。ちょっと、その記事見せてもらっていい?」


実野里は、意外に冷静だった。


(大型施設を建てるには、綿密な計画が必要だから、数年先に行われる可能性が高いはず。何年先かによって、対処が変わってくる。そっちが動くなら、こっちだって動くわ。大人しく待ってるなんて思ったら大間違いよ。)



< 15 / 225 >

この作品をシェア

pagetop